平成23年3月21日〜4月8日の期間に、本会会員に眼鏡の寄付をお願いして、約600個の眼鏡が北区医師会に集まった。不要になった眼鏡だけではなく新品の眼鏡も多く寄付して頂いた。眼鏡を洗浄し、規格を測定し、透明な袋にひとつずつ包装し、整理番号と規格を記載し、規格順にトレーに入れ箱詰めし、規格のリスト(エクセルのデータ)とともに、4月中旬に東北大学眼科の医局に送った。今回の経緯を述べることにする。
私は日本コンタクトレンズ学会の理事をしており、東日本大震災の被害者が、コンタクトレンズ装用中だった人は眼鏡を失い、新しいコンタクトレンズや消毒液が手に入らず、眼鏡が緊急に必要であることを被災地の眼科医から聞いた。また、眼鏡を装用していた人も破損したり、老眼鏡を紛失した被災者も多くいた。地元の眼鏡店が復旧するまでの間、緊急に眼鏡が必要であると判断された。
日本コンタクトレンズ学会の理事らと連絡をとり、寄付で集めた眼鏡をどのようなルートで被災者に届けるかを検討した。まず、一般の応援物資と一緒に送っても、倉庫に山積みにされ処分される可能性があり、眼科医に直接届けて、眼科医から被災者に手渡す方法が最も確実と考えられた。東北大学眼科の医局と連絡をとり、郵送方法や必要とされる眼鏡の規格を相談した。現地の眼科医に手間をとらせないように、そのまま避難所に持っていけるような眼鏡のセット(トレーに順番にいれて箱詰めにした)にして送り、すばやく眼鏡を選び出せるように配慮した。
今回、一番心苦しかった点は、善意の気持ちで寄付して頂いた眼鏡であるが、現地の先生の仕事量を減らすためにも送付する眼鏡は選択することが必要であった。寄付して頂いたが送付しなかった眼鏡は、破損している、レンズに傷がある、あまりに旧式のデザイン、左右の近視度の違いが大きい、乱視が多い、度入りサングラスなどであった。眼鏡を選択して送付した結果、東北大学の医師からは、「送られた眼鏡は最後のひとつまで無駄にしないように配布します。」とのお返事を頂いた。
(ワタナベ眼科 渡邉 潔)