病診連携

行岡病院 副院長・眼科部長
大阪大学 眼科学 臨床教授

二宮 欣彦


最近の白内障手術(2022.7.20)

眼はカメラに例えられる。角膜・水晶体は2枚の凸レンズ、その対面にある網膜はフィルムに当たる。白内障は水晶体の混濁であり、混濁のために光の散乱や収差が起こり、見えづらくなる。
白内障手術は、この混濁してしまった水晶体を取り除き、代わりに眼内レンズと呼ばれるレンズ(通常、凸レンズ)を水晶体嚢に挿入する。
患者の望む距離の像が網膜にピントが合う最適の眼内レンズ度数を予め計算し、その度数のレンズを挿入することで術前の近視や遠視を治すのが、今注目されている「屈折矯正白内障手術」の基本である。このため、角膜の凸レンズの度数と、網膜までのピントが合うための距離を正確に測定して、患者の望む距離とともに計算式に代入して眼内レンズ度数を術前に求める。
さて近視は、眼の長さに比べ屈折力が強いため、網膜の前方に焦点が合うものであり、このため正視に比べ遠くは見えにくいが、近くが見えるという利点がある。また乱視は、角膜の軸方向による屈折力の違いを言い、角膜が生体のレンズならではの特性である。白内障手術でこの乱視をそのままにしておくと、術後に良好な視力が得られない。
このため、角膜の乱視を矯正する乱視矯正眼内レンズが考え出され、行岡病院眼科は大阪で最初にこの眼内レンズを用い、今でも最多の手術数を誇る。つまり、術前の近視・遠視・乱視を治す最強の「屈折矯正白内障手術」である。このために当科では精密な測定と繊細な計算を行い、加えて外来検査器械と手術顕微鏡を連携し人工知能(AI)を用いた画像認識システムのガイダンスを用いた手術を行っている。
さて眼内レンズであるが、通常は焦点が一つの単焦点レンズであり、これは保険収載されている。一方、選定療養の多焦点眼内レンズがあり、こちらは回折現象を利用し、近視と正視が共存し近くと遠くが見える。
近視・遠視・乱視・そして老眼を治す「屈折矯正白内障手術」を、AIをはじめとする最新技術で実現しているのが当科の特徴である。

※ 詳細な内容は以下をご参照ください。
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