病診連携

大阪中央病院

肛門外科 久能 英法 内海 昌子 三宅 祐一朗 小野 朋二郎 斎藤 徹


当院における便失禁に対する仙骨神経刺激療法(SNM)の導入(2023.7.19)

当院は関西の肛門疾患の基幹施設として様々な肛門疾患への診療にあたっている。
近隣医療機関の先生方からの御紹介により、症例は年々増加傾向にあり2022年度は年間1,600件の手術症例に達した。今後も症例の蓄積に努めたい。

これまで痔核・痔瘻・裂肛・直腸脱等の疾患を中心として診療に当たってきたが、昨今の老齢化に伴い便失禁を主訴とする症例が増加傾向にある。便失禁に対しては、保存療法あるいは括約筋形成を行うことでその症状の改善に努めてきたが、さらなる治療選択肢の拡充を目指し、2023年度より便失禁に対する仙骨神経刺激療法植込み術(SNM: Sacral Neuro Modulation 以下SNM)を導入した。

SNMは、仙骨神経周囲にリードを留置し、同部へ断続的な電気刺激を与えることで便失禁や過活動性膀胱の改善を図る治療である。治療の流れとしては試験刺激と刺激装置植込みの二段階に分けられる。試験刺激では、仙骨裂肛からリードを留置した後に体外式の刺激装置に接続して効果判定を行う。便失禁症状の改善が得られれば、植込み式の刺激装置を留置する。症状の改善が得られなかった場合は抜去を行う。植込み式刺激装置を留置した後も抜去が可能であることから、可逆性がある点もこの治療の利点の一つである。

SNMに対する有効性についてはこれまで様々な施設から報告がある。SNM植込み後、70〜80%の症例で便失禁回数の著明な改善が得られ、30〜40%の症例では完全な禁制が保たれるといった報告もある。SNMの適応となる疾患も多岐にわたり、特発性便失禁、外傷性便失禁、直腸癌術後症候群などはエビデンスが集積されつつある。直腸脱術後の便失禁や潰瘍性大腸炎術後(IPAA後)などにおいてもSNMの有効性が報告されているが、まだ症例数が少なく今後の症例の蓄積と検討が期待される。

今後、当院においても様々な便失禁症例に対してSNMの適応を拡大しその有効性について検討を進めていきたいと考えている。近隣医療機関の先生方におかれましては、日常診療において痔疾のみならず、便失禁等でお困りの症例があれば当院へ御紹介頂ければ幸いです。今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。

※ 詳細な内容は以下をご参照ください。
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当院での肛門診療

当院での肛門診療


当院での肛門診療

当院での肛門診療


便失禁の原因

便失禁の原因


仙骨神経刺激療法(SNM)

仙骨神経刺激療法(SNM)


仙骨刺激療法(SNM)の対象となる病態

仙骨刺激療法(SNM)の対象となる病態