当院の婦人科について
● 2006年より腹腔鏡下手術に特化した診療を開始
● 子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫などの婦人科良性疾患に対して低侵襲手術の提供
● 技術認定医(日本産科婦人科内視鏡学会)の育成
● 他施設との連携
・不妊症を伴う卵管水腫・子宮筋腫・子宮内膜症などに対しては、重症症例であっても妊娠して生児が得られるよう、近隣の不妊クリニックと提携して治療に当たっております。
腹腔鏡下手術の年次推移 (図1)
手術件数は年々増加しております。2014年は異動等により若干手術数を 抑えることになりましたが、800件の手術を施行することができました。
子宮内膜症保存手術の年次推移 (図2)
保存手術症例数はあまり増えていません。
・低用量ピルやプロゲスチン製剤の発売により薬物療法施行例の増加
・挙児希望例には、将来的な妊娠出産を考慮しながら手術の時期や適応を慎重に判断している
しかしながら、重症例(深部・希少部位)の子宮内膜症手術が、少しずつ増えていることがお分かりいただけると思います。
子宮内膜症に対する子宮全摘術の年次推移 (図3)
子宮全摘術は年々増加しており、とくに膀胱・尿管・腸管等を含む根治手術症例が増加しております。
尿管子宮内膜症に対する腹腔鏡下手術(膀胱尿管新吻合)
泌尿器科と合同で、 膀胱尿管新吻合術や尿管吻合術を行っております。また、膀胱子宮内膜症に対しては、膀胱部分切除術を施行しています。
直腸子宮内膜症に対する腹腔鏡補助下低位前方切除術
外科と共同で手術に当たっており、子宮内膜症病巣切除と腸管の授動までは婦人科が、腸管の吻合は外科が行います。
腹腔鏡下手術で使用されるモルセレーターの問題
電動モルセレーターは腫瘤を細切除去するための筒状の刃の付いた器具であり、子宮筋腫を腹腔外へ搬出するために使用されます。
小さな切開部位から組織を細かく切って体外に取り除くことができ低侵襲手術では欠かせないものですが、子宮筋腫が悪性であった場合、悪性細胞が拡散される可能性があるとして、米国食品衛生局(FDA)はこの装置を使わないよう勧告しました。
前述の問題に対する当院婦人科の対応 (図4)
当院としては、現在、腫瘤を飛散させない方法として、アイソレーション・バッグを使用して半閉鎖的に子宮筋腫を細切除去する方法を開発しています。これは腫瘤の飛散をほぼ完全に予防できる画期的な方法であり、今後、安心して腹腔鏡下手術を受けていただくことができるだろうと考えています。
当院の腹腔鏡下子宮全摘術は、開腹による子宮全摘術に比べても、出血量が少ない、他臓器損傷などの合併症も少ない、などの利点がありますが、電動モルセレーターの使用時における腫瘍の飛散リスクも極めて低くなり、真に安全性の高い低侵襲手術が確立できつつあります。
※ 詳細な内容は以下をご参照ください。
▼すべての図表をPDFで見る(2.25MB)
図1.腹腔鏡下手術の年次推移
図2.子宮内膜症保存手術の年次推移
図3.子宮内膜症に対する子宮全摘術の年次推移
図4.腫瘤を飛散させずに
子宮筋腫を細切除去する方法を開発しています