肝臓がんには様々な治療法が存在するが、最強のがん局所治療として外科手術の意義は大きい。同時に、肝硬変を合併する肝細胞がんにおいては根治性と肝機能温存の両方に配慮した術式を考慮する必要がある。系統的亜区域切除術、右下肝静脈温存肝S7.8亜区域切除術などはこれらを実践した術式である。
さらに、平成22年4月より腹腔鏡下肝切除術(部分切除、外側区域切除が対象)が保険収載され、肝臓外科領域においても低侵襲手術が全国的に広く導入されるに至っている。筆者は1997年より腹腔鏡下肝切除術を導入し、特に肝細胞がんに対する腹腔鏡下肝切除術は100例超を経験している。症例の平均出血量は330ml、手術時間246分、術後在院日数10.7日と手術成績は良好であり、5年生存率は68.5%と根治性も保たれている。
また、もう一つのがん局所治療であるラジオ波治療においても、鏡視下治療を用いることで経皮的治療困難例に対しても低侵襲手術が可能である。これまで70例超の胸腔鏡/腹腔鏡下ラジオ波治療を行ない局所再発率は4%程度である。さらに画像診断の進歩も外科治療成績向上に大きく寄与している。新規MRI用造影剤プリモビスト(EOB)を用いた術前MRI検査は小結節の局在診断、質的診断を飛躍的に向上させた。超音波検査用新規造影剤ソナゾイドを用いた術中造影超音波検査は、使用可能な超音波検査機器に制約はあるものの、病理診断結果との対比ではEOB-MRIに勝る正診率であり過不足のない外科治療に貢献している。
以上、医療機器や手術技術の向上により肝臓外科治療は大きく進歩してきた。今後、肝臓がんに対して一層の予後改善が期待されると思われる。